逆転されかねないピンチを迎えても、サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督に動きは見られなかった。しかし、直後の85分に状況が一変する。
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が、FW俵積田晃太が倒されたのがペナルティーエリアのわずか外側だったと確認。PKが直接FKに変わった。
「タックルしたときは(ペナルティーエリアの)外だと思ったんですけど、後で見たら自分も相手もかなり中にいた。やってしまったと思いました」
俵積田を倒したDF荒木隼人は九死に一生を得た展開に苦笑いを浮かべながら、自身が背後についたMF荒木遼太郎に、同点弾を決められた71分を反省する。
「先制した直後に、チームとして前から行き過ぎないようにしよう、と話し合っていたなかで、それが受け身的な気持ちにさせたのかもしれない。拮抗した試合展開のなかで先制できて、ちょっとホッとした部分もあったのかなと」
FC東京戦ではMFマルコス・ジュニオールやFWドウグラス・ヴィエイラが、怪我やコンディション不良でメンバー外だった。しかし、攻撃の駒が不足していた状況だけが、スキッベ監督に交代カードを1枚も切らせなかった理由ではないだろう。
試合中に見せたほんのわずかな隙を、荒木に象徴されるように選手たち自身が気づき、反省しながら次戦で勝利するための糧にする。失点場面で相手のラストパスをクリアミスしたMF川村拓夢も「引き分けたのは僕の責任」と前を向いた。
「それ(交代なし)を言えば言い訳になる。監督は出ている選手をすごく信頼してくれているので、僕たちは100%でやるだけだと思っています」