パリオリンピック出場権を巡る女子サッカーのアジア最終予選で、2月28日、再び北朝鮮と激突する日本女子代表。中立地サウジアラビアで行われた第一戦は0-0のスコアレスドローに終わり、国立競技場で行われる第2戦で勝利したチームがパリ行きを決める。そもそも、この最終決戦にたどり着くまでには、さまざまな紆余曲折があった。なでしこジャパンが挑む「負けられない戦い」の舞台裏と浮上した大問題に、サッカージャーナリスト後藤健生が警鐘を鳴らす。
■「大きい」主催者の責任と「的を射た」熊谷の発言
前述のように、こうした事態を招いた最大の責任が北朝鮮政府や同国協会にあることは間違いないが、同時に早期に開催地を決定できなかった主催者(AFC)の責任も大きいのではないか。
「中立地開催」を提案したのなら、期限を切って北朝鮮側に早期決定を迫るべきだったろう。中国が難色を示したとすれば、移動距離の少ない東アジア地域で開催を引き受ける国を探すべきだったろう。
もちろん、国際的制裁下にある北朝鮮チームを受け入れる国を見つけることは難しかっただろうが、いずれにしても「中立地」として日本からも北朝鮮からも遠い(時差が数時間もある)中東地域を選んだことは愚の骨頂だ。
長距離移動と気温差を考えれば、ジッダ開催というのはあまりにも選手のコンディションを考慮しない決定であり、選手に対するリスペクトというものがまったく感じられない。
日本代表主将の熊谷紗希はジッダに移動する直前に「こんなことはあってはならない」と発言した。選手がオーガナイザー(主催者であるAFC)に対して、そのような内容の発言をするのは(とくに日本では)珍しいことだが、熊谷の発言はまさに正鵠を射たものと言わざるを得ない。
さらに「そもそも論」を言えば、2次予選で2位チームの最上位チームを最終予選に進ませる方式とか、最終予選をホーム&アウェーの“一発勝負”にするとか、予選の方式自体が不合理なものだった。
AFCは「強豪チーム同士を良いコンディションで戦わせて、アジアの女子サッカーのレベルを上げていこう」とは考えないのだろうか。