パリオリンピック出場権を巡る女子サッカーのアジア最終予選で、2月28日、再び北朝鮮と激突する日本女子代表。中立地サウジアラビアで行われた第一戦は0-0のスコアレスドローに終わり、国立競技場で行われる第2戦で勝利したチームがパリ行きを決める。そもそも、この最終決戦にたどり着くまでには、さまざまな紆余曲折があった。なでしこジャパンが挑む「負けられない戦い」の舞台裏と浮上した大問題に、サッカージャーナリスト後藤健生が警鐘を鳴らす。
■無失点で切り抜けたことが最大の収穫
パリ・オリンピック出場権を争う女子サッカーのアジア最終予選の第1戦。日本女子代表(なでしこジャパン)は北朝鮮とスコアレスドローに終わった。
前半は北朝鮮が5バックで引き気味だったので、日本がボールを持つ時間が長くなったが、いつものようなパスのキレがなく、また、2列目、3列目からの攻撃参加の意識も低く、結局、相手の分厚い守備を崩せないまま終わった。
そして、北朝鮮はロングボールを使ったカウンターで何度かチャンスを作った。
北朝鮮の選手たちは日本の前線からのプレスをかわすだけのテクニックを持っており(日本のプレッシャーもいつもより弱かったが)、ロングボールも単純に縦に蹴るのではなく、最前線に位置するキム・キョンヨン(23年アジアカップ杭州大会の得点王)がうまい位置取りで日本のDFとDFの間を取ったり、左右に開いてパスを引き出し、2列目の選手に落としてチャンスを作った。
そして、26分にはホン・ソンオクの落としからミョン・ユジョンが枠内にミドルシュート。GKの山下杏也加がCKに逃げたが、このCKからリ・クムヒャンにフリーでヘディングシュートを打たれてしまう。
後半に入ると、北朝鮮は一転してアグレッシブにしかけてきたが、そのギアチェンジに日本がうまく対応できず、さらに多くのチャンスを作られ続けてしまった。
90分を通じて、日本の決定機といえば、前半終了間際に右サイドを突破した藤野あおばが入れたクロスから田中美南が正面からシュートを放ち、相手DFに当たってコースが変わったボールを北朝鮮のGKパク・ジュミが足でかき出した場面くらいのもの。
山下のセーブやクロスバーに救われ、なんとか無失点で切り抜けたのがこの日の収穫としか言いようがない試合だった。