■どこまで求めるべきなのか

 今回の見学で、その様子を目の当たりにした後だから、ちょっと言いにくいのだが、このラインを引く煩雑な作業というのは、本当に必要なのだろうか? 僕はずっと疑問に思っている。

 VARが正式に導入されたのは2018年。ロシア・ワールドカップのときだった。つまり、導入されてからわずか5年半しかたっていないのだ。

 他のスポーツではずっと前からビデオ判定が行われていたが、FIFAなどサッカー界はずっとビデオ判定に対して頑ななまでに否定的だった。

 当時は、オフサイド判定はアシスタント・レフェリー(副審、かつてのラインズマン=線審)の肉眼で行われていた(現在でもVARが導入されない、たとえばJ2リーグでは肉眼が頼りだ)。

 前に向かって全速で走るFWとオフサイドの罠を懸けるために駆け引きするDFが交錯する一瞬。それも、攻撃側の選手がボールを蹴った瞬間を見極めながらジャッジするという不可能に近いことをアシスタント・レフェリーたちは行っていた(行っている)のだ。

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