サッカー日本代表のアジアカップが幕を閉じた。準々決勝でのイラン戦は、終了間際にPKを決められるショッキングな逆転負けだった。だが、そこに至るまでの内容、大会を通しての戦い方は、どう評価され、今後に活かされるべきなのか。アジアカップ8強が持つ意味を、ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が語り合った。
■パス回しの意味
――他にプレー面で気になったのは、どんなところですか。
大住「ベトナムとの初戦から最終ラインとCBの間でボールを回していることがすごく多かったけど、それが何のためのパスなのか、まったく分からなかった。鈴木彩艶はいろいろと言われたけど、ひとつの問題は攻撃のアイディアがないこと。ボールを受けて、受け手を探して、パスを出して、というだけで、その後のプランはないのかな、という感じがするよね。準々決勝で食らったイランの同点ゴールは真ん中をあっさり破られたものだったけど、日本のGKとCBの3人でのパス回しから始まった。最終的に、彩艶がボールを出したのは前線にいた久保建英に向かった浮き球だったけど、小柄な久保に屈強なイランのDFと競り合えというのはちょっと難しい。ボールも久保の頭上を超えちゃって、跳ね返されて、ゴールにまでつなげられた。彩艶がボールをこぼすことに非難の声が上がっていたけど、そっちのほうが気になるな」
後藤「彩艶は経験不足なんだからしょうがないよね。森保一監督はそれを承知の上で2026年のワールドカップのために目をつむって起用したんだから、失敗じゃなくて、しょうがないことだよ」
大住「彩艶が成長のためにすべきことはたくさんあるな、と思ったね」
後藤「でもイラン戦では、最初の頃と比べると良いプレーをしていたじゃない。相手の足元に飛び込んでいったり、ロングキックで味方の攻撃につなげた場面もあった。初戦からの5試合を経験して、こういう大会でも、それなりにプレーできるように経験を積んだことは収穫だったよ」