■4-2-3-1スタートがベースか
ポポヴィッチ監督はスタートの段階で、4ー2ー3ー1をベースに構築しているように思うが、守備に関しては4ー4ー2の3ラインがベースであり、1トップでも2トップでも、その形に支障はない。その意味では鈴木優磨とチャヴリッチの2トップというのも想定できるところだが、もちろん垣田裕暉や知念慶といった選手たちも黙ってはいないだろう。やはり一昨シーズンの夏に、前半戦だけで10得点を記録していた上田綺世が欧州に渡ったことは痛手であり、そこに代わるFWを加えられなかったことは岩政前監督の攻撃構築にも響いたことは確かだ。
ただ、何より大事なのはチームとして高い競争力と一体感を持って、シーズンを戦い抜くこと。柴崎のピッチ内外でも発信力や要所での鈴木優磨の勝負強さ、新外国人の決め手に頼る部分があっても良いが、昨シーズンのヴィッセル神戸がそうであったように、一人ひとりが責任と自覚を持って、チームの勝利に貢献していくことが必要になる。ここまでポポヴィッチ監督は明るい雰囲気を作り出しているが、本来は激情的な厳しさも持ち合わせている指揮官だ。
長いシーズン、時にはポポヴィッチ監督がカツを入れることもあるだろうが、チームとしての太い矢印をみんなで作り出し、前向きに戦っていけるかどうか。選手個々の伸びしろを含めて、戦力的にも楽しみだが、現時点の評価としてはJ1で特に突出しているわけではない。悲願のタイトル獲得にはチーム内の競争力をどれだけ高めながら、戦術面と精神面を融合していけるかが鍵になる。
(取材・文/河治良幸)