■鈴木が大切にする「緻密さ」

 24年シーズンの湘南の新加入選手は、鈴木、ルキアンを含めて4人だ。昨シーズンのチーム得点王だったFW大橋祐紀、クラブ生え抜きのDF石原広教らがJ1の他クラブへ移籍したが、主力選手の多くが残留した。期限付き移籍だったCBキム・ミンテ、MF奥野耕平も完全移籍となった。J1残留争いを演じた昨シーズンの悔しさが、チームを前進させるエネルギーとなっていく。

 鈴木は静かに頷いた。

「一番はやっぱりチームの順位というか、チームとして積み上げたなかでいい試合をして、どれだけ勝点を伸ばしていけるか。例年J1残留争いをしているのは事実としてあるので、みんなで力を合わせてひとつでも上の戦いをしていきたいなと思っています」

 磐田の一員として臨んだ22年のJ1では、6勝12分6敗で最下位に終わった。終盤の失点で勝点3が1になったり、ワンチャンスを生かされて黒星を喫したりした。

「僕自身が勝つために一番大事にしているのは緻密さです。90分間を通して、どれだけスキなく、緻密にできるか。レベルが上がれば上がるほど、一瞬のスキでやられるのが当たり前なので、それをやっぱりどれぐらいの強度でこのチームができているのかは、外から見ているだけでは分かりません。チームのなかに入って実際にやってみて肌で感じて、これからいろいろと分かっていくものかなと思います」

 24年シーズンの湘南は、『一戦必湘(いっせんひっしょう)』をスローガンとする。山口智監督は「結果を出さないといけないシーズン」と語る。上位進出を明確に意識しつつ、目前の試合に情熱と闘志を注ぐ。

 捲土重来を期すチームで、鈴木はどんなプレーを見せていくのか。高精度のクロスだけでなくアタッキングサードで仕事ができ、182センチのサイズがあり、複数ポジションに対応できる彼なら、J1の舞台でも脚光を浴びることができるはずだ。言うまでもなくそれは、チームの躍進につながっていく。

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