■「サイドのクオリティアップ」を担う

 23年シーズンの湘南は、最終盤までJ1残留争いを演じることとなった。8勝10分16敗と黒星が大きく先行した一方で、韓国人センターバックのキム・ミンテを期限付きで獲得し、MF田中聡が期限付き移籍先のベルギー(KVコルトレイク)から復帰した22節以降に限れば、6勝3分4敗の好成績を残した。

 吉野智行スポーツダイレクターは、「センターラインの選手の確保によって、安定した試合運びができるようになった」と分析し、鹿島アントラーズからの期限付き移籍だったキム・ミンテを完全移籍で獲得した。そのうえで、チームの強みと認識するサイドの「クオリティアップ」を編成のポイントにあげた。

 吉野SDによれば、23年シーズンの湘南はクロス数が1試合平均15・4本だった。これはJ1リーグで5位に相当する。ペナルティエリア脇のスペースへの侵入回数は、1試合平均17・3回だった。こちらはリーグ4位である。いずれも高い数字を残しているが、クロス成功率は21・6パーセントでリーグ9位にとどまった。また、総得点「40」のうち、クロスから生まれたものは8得点だった。クロス数やペナルティエリア脇への侵入回数が、しっかりと得点に結びついていなかったのである。

 そうしたなかで、3-4-2-1のシステムで右ウイングバックを務めていた石原広教が、今オフに浦和レッズへ完全移籍した。長く右サイドの人材となっている岡本拓也、左右両サイドに対応する畑大雅らがいるものの、クオリティアップを強力に推し進めるタレントとして、鈴木の獲得に乗り出したのだった。

 23年シーズンのJ2で、鈴木はリーグ3位のクロス数を記録した。ペナルティエリア内への侵入回数はリーグトップである。クロス成功率は24・8パーセントで、昨シーズンの湘南の数字を上回る。吉野SDはカテゴリーが違ったことに触れつつも、「これだけのクオリティを示すことは大変で、J1においても貴重な戦力になる。ホントに心強い選手が入ってくれた」と説明している。

湘南ベルマーレの新体制発表会でマイクを取る鈴木雄斗 「(C)SHONAN BELLMARE」
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