後藤健生の「蹴球放浪記」第195回「日本人は本当に生魚を喰らうのかい?」の巻(1)ヨーロッパが寿司を知らなかった時代の画像
豪州人記者に寿司をご馳走になった2011年カタール・アジアカップのADカード 提供/後藤健生

 サッカーは、言語が通じなくとも世界をつなぐ文化である。多少の違いはあれど、触れることで互いの文化を学んでいくのだ。蹴球放浪家・後藤健生は、食文化にも同じ作用があると考える。

■世界で愛される寿司

 和食がUNESCO(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されてから10年の年月が経過し、世界中の人に注目されるようになりました。その象徴的な存在が「寿司」でしょう。

 今では世界のどこに行っても、寿司は手に入ります。

 2011年にカタールでアジアカップが開かれ、アル・サッドのスタジアムでオーストラリアの試合を観戦していた時のことです。隣の席にオーストラリア人記者が座っていたのですが、彼はサッカー専門ではないようで、試合展開を追えないようで「今のパスは誰からだった?」といろいろ質問してきたのです。

 で、僕が背番号ではなくすべて選手の名前でパスのつながり方を説明したので、すっかり僕のことを信用くれたようでした。

 ハーフタイムになると、彼はすぐに席を立ってどこかに行ってしまいました。そして、後半開始直前に戻ってきた彼は、どこかで寿司を手に入れてきたのです。いろいろ説明を受けたお礼です。「さあさ、寿司食いねぇ。寿司食いねぇ」という訳です。

 つまり、アル・サッドのスタジアムでも寿司を売っていて、オーストラリア人記者が寿司の売店をしっかり認識していたということです。

  1. 1
  2. 2
  3. 3