1974年ワールドカップで「20年後のサッカー」を見出した先見性【サッカー記者・荒井義行さんを悼む】(2)の画像
1994年のワールドカップ・アメリカ大会、ボストン会場で。右が荒井義行さん。左は賀川浩さん、中央は中条一雄さん。荒井さんはこの3人のなかではいちばんの長身だったが、小さく見えるのは、記者席の下段に立っているためだ。(c)Y.Osumi

 現在の日本サッカーがあるのは、多くの先達のおかげだ。その尽力者は選手、監督といった直接かかわる人々だけではない。深い愛情を持ってサッカーを世に届け続けてきた大記者を、サッカージャーナリスト大住良之が偲ぶ。

■1974年のひらめき

 当時は情報も非常に限られていた。「三菱ダイヤモンドサッカー」で世界の動くサッカーの姿は伝わってくるようになっていたが、週に1回の放送、しかも1試合が前半と後半に分けられて2週にわたって放映という形では、はいってくる情報も限られている。

 興味深いコメントがある。「ダイヤモンドサッカー」の解説で有名な岡野俊一郎さんが、1974年ワールドカップ終了後に英国のベテランサッカー記者エリック・バッティと対談したときに、オランダ代表について話した言葉である。

「私は、オランダのナショナル・チームは以前には見たことがないので、今回のワールドカップでオランダを見て非常に興味を持った。アヤックスの試合は、一、二度テレビで見たことはあるが…」(『サッカーマガジン』1994年9月号)

 岡野さんでさえこうなのである。日本では、オランダ代表のプレーぶりなどを見る機会など皆無であったことがわかる。そうしたなか、荒井さんは大会前になぜかひらめき、オランダを追いかけることにしたという。

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