サッカーの世界は、常に変動している。目まぐるしくトレンドが入れ替わりながら、文化としての発展を示していく。日本でも、さまざまなカテゴリーの垣根を越えて、そうした潮流が見える。サッカージャーナリスト後藤健生は、そこにフットボール文化の浸透を感じている。
■女子サッカーの名門
テクニックを前面に出したスタイルからカウンタープレス的な戦い方へ……。
この動きは女子サッカーの世界でも起こっている。2011年の女子ワールドカップで日本女子代表(なでしこジャパン)が優勝を遂げた時、そのショートパスをつなぐサッカーは世界から称賛を浴びた。ちょうど、「ティキタカ」全盛時代だったので、なでしこジャパンは「女子のバルセロナ」と言われたこともあった。
それは、日本の女子サッカー界で常に中心にいた、ベレーザのサッカーでもあった。
現在は「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」と呼ばれるチームは、あの読売サッカークラブの女子部門からの伝統を持つチームで、代表選手の多くを輩出。日本の女子サッカーへの貢献度は非常に高い。
読売サッカークラブは1969年に将来プロ化を目指すために作られたクラブだった。そして、与那城ジョージやラモス瑠偉のようなブラジル出身選手と、彼らを見て育った育成部門出身の日本人選手が、それまでの実業団チームとはまったく異なった、個人技を生かしてパスで相手守備陣を崩すスタイルで戦って注目を集めていた。
ベレーザのプレースタイルも、この読売クの伝統を引き継いだものだった。
だが、世界の女子サッカーが急速に発展していくと、なでしこのスタイル(ベレーザのスタイル)のパス・サッカーだけでは勝てなくなってきた。