■「あくまで成長過程というところです」
その決勝戦前後で、鬼木達監督が話した内容で注目した2つのポイントがある。1つは、タイトルマッチの難しさに挑むこと。
決勝戦を前に、「(こういう大舞台は)蓋を開けてみないとどういう展開か分からない」と想定を述べたうえで、「どのゲームもそうですけど、全部が自分たちの思い通りにいったゲームなんて一つもない」と、あらゆる状況に対応する必要性を説明していた。
その点について激戦を制した直後の国立競技場での熱気あふれる会見場では、「どんな苦しい状況でも勝つことはやっぱり簡単ではない。説明するのが難しいですけど、全員が本当に細かいところにこだわって、全員が勝ちにこだわったからの優勝なので、そこに選手の成長を感じています」と振り返った。成長があればこそ思い通りにいかない時間帯をも乗り越えることができた。
もう1つは、タイトルと成長について。この点について試合前に気持ちを指揮官に聞いた際には、「あくまで成長過程というところです」と話し、だからこそ、「ビッグマッチでそういう成長過程の選手たちが縮こまらずにやれるような環境を作っていきたい」と説明。そして、「そこでしっかりとした結果を得られれば選手たちはより深い自信となって、また次のゲーム、もしくは来年に挑めると思います」と期待を表していた。
そして試合後に改めて話を聞くと、「どんな形でのタイトル獲得でも、タイトルを取るときの空気感はどうしても言葉では説明できないものなので、選手にそれを味わってほしい。そして次の世代に伝えてほしい」とし、「この大観衆の中で自分たちのサッカーで勝利をできたかというとそうではないので、そこは非常に悔しさが残ってます」と、手応えと修正点を口にしたのだった。
タイトルの連鎖――つまりは、“6つの星”を手にする中で積み上げたクラブとしての力を7つ目に変えることに成功した。そして24年は、それを8つ目につなげようとしている。
(取材・文/中地拓也)
(中編に続く)