■止まらなかった柏
柏は前半だけで11本のシュートを放ったのだが、完全に相手を崩してのシュートはなかった。最大のチャンスは15分のCKからの椎橋慧也のヘディングシュート。あとは、遠目からのほとんど可能性を感じないミドルシュートだけ。そして、強引なシュートはことごとく川崎のDFにブロックされてしまった。
前半の柏は、キックオフ直後から攻守ともにアグレッシブに戦い続けた。明らかに“飛ばし過ぎ”だった。
スタンドから見ていた僕は「90分はもたないだろう」と思った。おそらく、川崎サイドとしても「無失点で切り抜ければ、いずれ柏の足が止まるから、そこで仕留められるだろう」という気持ちもあったのではないか。
だが、柏の選手たちは後半になっても足を止めることはなかった。
もちろん、疲労がないはずはない。時間とともに前線からのプレッシングは弱まり、またパスの精度も前半より落ちた。一方、川崎サイドもより速くボールを回すなど意識も変えてきたため、後半は中盤で激しいボールの奪い合いが続き、そして一進一退の攻防が繰り広げられるようになった。
だが、柏の選手たちに疲労の色は濃かったものの、最後まで足だけは止まらなかった。川崎の攻撃の主戦場は家長昭博と山根視来が組んで、そこに脇阪泰斗が絡む右サイドだが、柏の左サイドバックの片山瑛一は上下動を繰り返して守備に奮闘し、そして攻撃にも絡み続けた。中盤では椎橋と高嶺朋樹が動き続けてボールを拾って前線に供給を続けた。キャプテンの古賀太陽と立田のCBコンビもいつも以上に安定感があった。
そして、疲労の色が濃くなったゲーム終盤には井原正巳監督がうまく交代を使いながら、チーム全体の勢いが失われることを防いだ。