120分間スコアレスを「演出」した「止まらない飛ばし過ぎ」と2人のGK【記憶にとどめておくべき第103回天皇杯決勝のポイント】(2)の画像
両チームのGKが引き締まった試合を演出した 撮影:原悦生(SONYα1使用)

 第103回天皇杯決勝が12月9日に行われ、川崎フロンターレが日本一に輝いた。3大会ぶり2度目の優勝となったが、準優勝の柏レイソルのプレーも含めて、数字には表れない見どころが詰まった一戦だった。記憶にとどめておくべきポイントを、サッカージャーナリスト後藤健生が振り返る。

■柏が圧倒した前半

 国立競技場の記者席は3層目のかなり高い位置にあるので、いわゆる戦術カメラのような視点からの観戦となる。そこからピッチを見下ろすと、川崎の中盤が間延びして、スペースができてしまっていることがよく分かった。

 こうして、パスのうまい川崎もつなぐことができなくなってしまったのだ。パスがつながらなくなったため、せっかくボールを奪ってもすぐに柏に回収され、再びトップに長いボールを入れられて、川崎は最終ラインを上げることができなくなってしまった。

 川崎がこの状態を変えるためには、思い切って守備ラインを高く設定するか、前線が下がってスペースを狭くするしかなかっただろう。

 だが、相手の強力ツートップが裏を狙っているのでラインを上げるのはリスクが大きすぎる。逆に前線の選手が下がってしまうと、今度は柏の後方の選手が狙いすましてロングボールを入れてくることになる。

 スピードのあるマルシーニョがいれば、前線を下げて相手陣内にスペースができたところでマルシーニョを走らせるという戦い方も選択できただろうが、この日はマルシーニョは欠場だった。

 結局、川崎が選択したのは相手にボールを持たれることは容認して、最終ラインを固めて耐え続けることだった。

 試合後、川崎の鬼木達監督は「前半は我慢することしかできなかった」と振り返った。

 そして、実際に川崎は中央を固めて我慢を続けて耐えきった。

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