単刀直入な言葉だからこそ、逆に説得力が増してくる。
「タテに速く、は悪くない」
今シーズンを通して、大迫勇也はヴィッセル神戸の選手たちにこんな言葉を投げかけ続けた。昨シーズンの後半に奏功し、J1残留を果たす原動力になったハイプレス戦法を、引き続き指揮を執る吉田孝行監督は開幕前のキャンプから熟成させた。
司令塔アンドレス・イニエスタ(現エミレーツ・クラブ)が加入した2018年夏から掲げてきた、ボール支配率を高める「バルセロナ化」とは対極に位置する戦い方。チーム内に少しでも戸惑いが生じれば、絵に描いた餅に終わりかねない。
だからこそ、ドイツで約7年半プレーし、ヨーロッパの潮流を熟知する大迫は率先して動いた。同じくドイツ帰りのDF酒井高徳が、盟友の言動をこう補う。
「ボールを奪いました、じゃあ回そうぜ、というのが日本のJリーグなのに対して、ヨーロッパの多くのチームは奪ったボールを常に前へ速く運ぶ。攻撃面だけでなく守備面でも『前に』というところを意識させ、さらにクオリティーも上げていくためにも、サコ(大迫)がすごく口を酸っぱくして言ってきました」