■ピッチ上の主役と脇役

 だが、完成された姿と言ってもいいサッカーのピッチのデザインにも、主役と脇役、スターと、存在意義も理解されていないラインという「格差」が厳然と存在する。

「スター中のスター」はペナルティーエリアのラインである。このラインに囲まれたエリアの中で守備側が反則を犯せば、試合を決定づけかねないPKの判定となる。他のプレーヤーたちとは違う色のウエアを身にまとい、チームでただひとり手を使って派手な守備を披露するゴールキーパーたちも、ここを出たら手を使うことができない。そして得点の9割は、このペナルティーエリア内のシュートから生まれる。というわけで、サッカーの選手も監督も、そして観客も、ペナルティーエリアは強く意識し、長方形の形状から「ボックス」という異名まである。

 このペナルティーエリアと比較して、気の毒ながらほとんど実用的な価値がなく、注目を集めることがないのが、ゴールエリア、両ゴール前に引かれた二重の長方形のなかで、ゴールに近い小さなほうの四角である。いまでは、「この四角、何のためにあるの?」と思っている人も少なくないに違いない。

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