■「ただ、そんなの関係ないのがサッカー」
11月4日に行われたルヴァンカップ決勝で、アビスパ福岡が浦和レッズを破って初めてタイトルを獲得した。この出来事も、瀬川に刺激を与えた。
「群馬のときの同期だった2人がいて、先に越された気持ちもあったし、やっぱアビスパみたいなチーム初タイトルっていう、いろんな状況を考えたら、アビスパはより一層強い気持ちで試合に入っただろうし。うらやましかったです」
こう話して視線を遠くに投げる瀬川は、「失礼ですけど、今までの歴史考えたら浦和じゃないですか」と下馬評が高かった浦和の立場を説明しながら、「ただ、そんなの関係ないのがサッカー」とこの世界の怖さを知っている。勝負は水物。事前にどんな情報が流れようと、蓋を開けてみるまでは分からない。
一方で、福岡について「チームとして戦ってくるすごくいいチームで、そういうチームがタイトル取れるっていうのはすごい刺激になりますし、外から見ててもアビスパでタイトルとったら超嬉しいだろうなっていうのは思いました」と語り、優勝の原動力を分析すると同時にタイトルに想いを馳せる。
この試合後、群馬時代の同期2人には連絡をしたという。「PK外したやつがいるんで」と苦笑いのスパイスをまぶした「おめでとう」という祝福の言葉を送ったのだ。
12月9日の試合後、その同期から祝福の言葉は受け取れるのか。そして、プロ入り前に内定をもらったビール会社の同期や関係者に恩返しをできるか――。瀬川にとってさまざまな思いを乗せたタイトルマッチは、もう目前だ。
(取材・文/中地拓也)