■試合の入りは悪くなかった
「超攻撃的」が、負けるべくして負けた。
J2からJ1へのラスト1枠をめぐる昇格プレーオフ決勝が、12月2日に東京・国立競技場で行なわれた。ホームの東京ヴェルディのサポーターが緑に、アウェイの清水エスパルスのサポーターがオレンジに、スタジアムを染め上げる。J2では異例と言っていい5万人を超える観衆が見つめるなかで、14時6分、運命のキックオフを迎えた。
リーグ戦の順位は東京Vが3位、清水が4位だ。秋葉忠宏監督率いる清水は、勝たなければ昇格できない。
試合の入りは悪くなかっただろう。プレーオフ1回戦(準決勝)のモンテディオ山形戦は序盤の主導権を握られたが、この日は冷静に、かつ意欲的な入りだった。
4-2-3-1のトップ下で先発したFW乾貴士は「良い入りができていたと思いますし、相手にびびっているとかはまったくなかった」と話す。準決勝に続いて先発したGK大久保択生も、「これだけお客さんが入っている国立でやるということに、緊張している選手もいたでしょう」と話しつつ、「ヴェルディの選手のほうが緊張してそうだな、というのはやっていて思いました」とも振り返る。
試合の入りは悪くなかった。試合の進めかたも悪くなかった。選手に固さはない。ただ、決定機は多くないのである。
「超攻撃的」のスローガンをそのまま内容に反映できたシーズン中の試合では、かなりの確率で前半のうちにスコアを動かすことができていた。しかし、リーグ戦最終節の水戸ホーリーホック戦ではスコアレスで前半を折り返し、62分に先行されて辛くもドローに持ち込んだ。山形をホームに迎えたプレーオフ準決勝も、攻撃のエンジンがかかるまでに時間がかかり、前半は0対0で折り返している。
両チームがスコアレスで前半を終えたロッカールームで、秋葉監督は「どうやって仕留めるのか」を確認したと言う。
「ゲーム自体は優勢に見えますけど、最後のフィニッシュのところで前半から決定機があるかというとそうではなかったので、最後のボックス周りからどう冷静にパスを出すのか、フィニッシュまで持っていくのか。選手は少し力が入っているように見えましたので、そうならないように。
前半あれだけヴェルディさんが来ていれば後半は足が止まると思っていましたので、そのなかでシステムを含めてどうやって仕留めるのかは、選手に話しました」