サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は「コーチを救う、よだれかけ」。
■オシムさんの代名詞
「新型コロナウイルス」を機に、いまはJリーグの多くのクラブで練習は原則非公開となってしまった。しかし以前はまったく違った。故イビチャ・オシムさん(1941-2022)も、指導したジェフ市原・千葉と日本代表ですべてのトレーニングを公開していた。そのなかで話題になったのが、「7色のビブス」を使ったトレーニングだった。
「ビブス」はトレーニングに欠かせないアイテムだ。頭から被るゆったりとした「ベスト」の形式のウェアで、これを着脱することで容易にチーム分けができる。通気性が良く軽いメッシュの人工素材でつくられており、選手たちの負担はほとんどない。ビブスの出現により、コーチたちの仕事はずいぶん助けられているはずだ。
通常、ビブスは2色(チーム分け)あるいは3色(3色目はフリーマン)までしか使わない。しかしオシムさんはたくさんの色のものを用意させ、ゲーム形式の練習のなかで着用させたのである。なぜそんなことをするのか、さまざまな憶測が生まれた。選手たちの頭も「???」といった状態だったらしい。