J1クラブの3割強の予算で乗り越えたシーズン途中の主力の離脱【ベテランジャーナリストがJリーグの「クラブ・オブ・ザ・イヤー」に甲府を選ぶ理由】(3)の画像
ウタカ獲得など、甲府はチーム強化でも奮闘した 撮影:原悦生(SONYα1使用)

 Jリーグは佳境に入っている。シーズン終了後には毎年、さまざまなチームや選手が表彰される。その中にはない賞ではあるが、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之は「クラブ・オブ・ザ・イヤー」としてヴァンフォーレ甲府を称えたいという。甲府のピッチ内外の奮闘を挙げながら、その理由をつづる。

■限られた予算

 活躍した選手はJ1のクラブに引き抜かれ、出番を得られなかった選手はJ3のクラブに移っていく―。J2のクラブは毎年大量の選手入れ替えを余儀なくされる。甲府は決して裕福なクラブではない。2022年度の総売り上げは約15億6400万円。J2の平均(約17億2800万円)にも及ばず、J1の平均(約48億6400万円)の3割強に過ぎない。限られた予算だが、ACLとの「かけもち」を考えれば、ある程度の選手数は確保しなければならない。ただ、今季を迎えるに当たって、主力の流出は最少減に抑えられ、経験豊富なMF武富孝介とFWピーター・ウタカ京都サンガF.C.から獲得できたことで戦力はプラスになった。

 クラブは天皇杯優勝の功績を残した吉田前監督に代えて篠田善之監督を登用、地元出身の新監督の下で「挑戦」の2023シーズンが始まった。開幕から3試合は勝利がなかったが、3月から新監督の戦術もこなれて成績が上向き、5月27日にはホームで大宮アルディージャに5-1で大勝して3位に浮上した。

 ただ、キャプテンで右サイドバックの須貝英大が7月にJ1の鹿島アントラーズに移籍し、天皇杯優勝のヒーローで不動の守護神だったGK河田晃兵が8月13日のいわきFC戦で右ひざを大けがしてしまったのは大きなショックだった。7月、8月は苦戦が続き、9月を迎えたときには順位も10位まで落ちていた。

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