■痛恨の逆転負け
勝てば逆転で「プレーオフ圏」を確保できる山形は、1万2000人を超すサポーターの大声援を受けて奮闘した。前半、風下に立った甲府は苦しい戦いを余儀なくされたがなんとかしのぎ、後半、MF鳥海芳樹を投入して攻勢に転じた。そして18分には、FW三平和司に対する相手GKのファウルで得たPKをFWクリスティアーノが左隅に決め、待望の先制点を奪った。
だがこのまま守りきるかと思われた後半32分、右から山形に攻め込まれ、山形DF小野雅史のドリブルを止めようとした甲府MF松本凪生のタックルがファウルと判定されてPKを献上する。これを決められ、1-1の同点となる。
そしてアディショナルタイムに入って間もなく、「魔の瞬間」が訪れる。甲府がチャンスをつくり、ウタカのシュートがブロックされたところから始まった山形の攻撃。山形DF川井歩の前進はDF蓮川壮大が出足よく止めた。だが、タックルしたときに足を痛めたのか、蓮川は立ち上がれず、こぼれたボールを自陣に戻りながら拾う川井に詰め寄ることができない。
甲府の選手たちに「空白の瞬間」が生まれたのはそのときだった。川井が再び前を向いた瞬間、信じ難いことに、甲府の全選手の足が止まっていたのだ。川井からペナルティーエリアに走り込んでいた山形MF南秀仁にパスが渡り、南が中央に送ると、そこにいた山形FWデラトーレが右足に当てて甲府ゴールのネットを揺らした。