サッカーにもラグビーにも存在する「軽微な犯罪」【VARとハンドとオフサイトの関係を考える】(1)の画像
プレーとルールの関係を考える(写真はイメージです) 撮影:中地拓也

 サッカーは年々、進歩している。近年では、競技を取り巻くテクノロジーも驚くべき早さで進歩している。こうした進化と、競技と我々はいかに共存していくべきなのか。サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。

■ラグビーW杯が終幕

 フランスで開催されていたラグビーのワールドカップは、南アフリカの4回目の優勝で幕を閉じた。南アフリカとニュージーランドの決勝はまさにラグビー界の「トップ2」の対決だった。今回で10回目となるラグビー・ワールドカップだが、過去に優勝経験がある国はわずかに4つ。南アフリカが4回、ニュージーランドが3回のほかは、オーストラリアが2回、イングランドが1回のみとなっている。

 しかも、直近の5大会を見ると優勝は南アフリカとニュージーランドで独占されているのだ。「番狂わせが起こりにくい」競技として知られるラグビーらしい結果と言える。

 10月28日にサンドニのスタッド・ド・フランスで行われた決勝戦は12対11という大接戦となった(南アフリカは準々決勝以降の3試合、すべて1点差の勝利だった)。

 しかし、南アフリカの得点はすべてハンドレ・ポラードのPG(ペナルティーゴール)によるものだった。一方のニュージーランドは、ボーデン・バレットのトライが1つあり、リッチー・モウンガが2本のPGを決めた。その結果が、12対11のスコアだったのだ(ラグビーではトライが5点、トライ後のコンバージョン・キックが決まればさらに2点。PGやDG=ドロップゴールは3点)。

 つまり、トライ数ではニュージーランドが1対0で勝っているのだ。

 もちろん、相手陣内に押し込んで相手にペナルティーを誘発させるのもラグビーなのだから、南アフリカの勝利にはもちろんそれだけの価値がある。だが、一般的に強豪同士の試合では組織的守備が強いのでトライがほとんど生まれず、キックによる勝負になってしまう事が多い。

 たとえば、日本も所属していたプールD(「プール」というのはサッカーで言う「グループリーグ」のこと)の初戦ではイングランドがアルゼンチンを27対10で破ったのだが、イングランドの得点はすべてジョージ・フォードのPGかDGによるもの。この試合唯一のトライはアルゼンチンのロドリゴ・ブルーニによるものだった。

 ラグビー素人の僕には、ペナルティーによって決まってしまうことには釈然としないものを感じざるをえなかった。だって、トライこそ、ラグビーの「華」なのではないか!

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