■「普通にオーソドックスで4-4-1だろうな」
しかし、前半38分に車屋紳太郎が退場処分となる。浮き球を処理する際に、車屋の左足裏が興梠の顔に入ってしまったことで、レッドカードが提示されたのだ。それでも2試合合計4-2としていた川崎が優位であると思われたが、後半に入って3失点。結局、2試合合計4-5で大会から去ることとなった。
鬼木監督が「あれからですかね、ちゃんと考えるようになったのは」と話すように、指揮官自身に大きな変化をもたらすものとなった。
「あの試合で前半が終わって、(ハーフタイムに)当たり前の指示しか出せずに後半を迎えて、フォーメーションも何も考えずにって言ったら変ですけど、そんなに経験がなかったのもあるんで、普通にオーソドックスで4-4-1だろうなとか、1人少ないから体力ある人がいた方がいいよなとか、何かそういうすごく抽象的と言ったら変ですけど、明確なものが自分の中で少し足りなかったかなっていうのはありますね」
ここで鬼木監督が話す「何も考えずに」というのは、言葉通りに受け取れるものではない。オーソドックスな考えに則ってしまったという類のものであり、もっと言えば、徹底的にいろいろなことを想定していなかった、という意味であろう。
川崎が連勝を続けている2020年や2021年に試合後に発していた言葉で、勝利したにもかかわらず、相手にやや隙を見せてしまったということで「あらゆる場面を想定して徹底的に考えたのかを自分に問いたい」といった趣旨の話しをしたことがあった。それほど自身に厳しく課す指揮官だが、その転機は2017年にあったのだ。