■鬼木監督と竹内強化本部長が話す姿勢と使命

 試合後は東京都内に宿泊し、翌13日にバスで再び帰る。片道5時間。最寄りのICを降りても2時間走らなければいけない。バス移動の疲れは間違いなく大きいが、等々力競技場で感じたものと触れたものの大きさは、きっとそれを凌駕する。

 すでに説明したように、今回のバスツアーは川崎のスポンサーのクラブ愛が檜枝岐村に”伝染”したことで実現した。スポンサーが、金銭面や物資提供などでの支援だけでなくこうした形でチームのファン層拡大に関わることは、Jリーグにとって新たな可能性を示している。今回の件はまだその過程にあり、”ミディアムレア”な状態だが、『ALC BEEFキッチン』にとっては得意な形であり、今後、さらに”熟成”させていくことも期待される。

 このようなスポンサーすらも新たな形を模索するのは、川崎フロンターレならではといえる。等々力競技場の陸上トラックをフォーミュラカーが疾走するなど、ピッチ外でも話題を振りまいてきた。同じくスポンサーである『川崎信用金庫』の堤理事長自らトラメガを持ってサポーター席でチャントを歌ったことも1度ではない。岩手県陸前高田市との関係もある。ピッチ上の魅力的なサッカーをすることと、ピッチ外でも魅力を生み出すことは、このクラブの“使命”でもある。

 8月8日、川崎は元フランス代表FWゴミスの獲得を発表した。この日、竹内弘明強化本部長が取材に応じたのだが、その獲得の意図について、戦力であることを前提としたうえで、こうも話していた。

「フロンターレとしてはワクワクすることや、周りとは違うことをやるのがフロンターレの使命だと思っていますので、そういうことも考えながら、強化スタッフもチャレンジという舵を切りました」

 また、今年5月にはJリーグ30周年を記念して川崎は国立競技場でFC東京と対戦。そのビッグマッチを前に鬼木達監督が麻生グラウンドで意気込みをこう言葉にしていた。

「やっぱりJリーグの人気を考えていかなきゃいけないし、ずっとそうやって、やってきたつもりでいる。結果はもちろん求めていきますけど、内容とか(アグレッシブな)姿勢はすごく大事にしたい」

 現場や強化部も合わさって川崎というクラブの魅力を高めようとしていることは、スポンサーも共鳴する素地となっている。

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