■負けた選手への感想は「かっこよかった」
試合は、苦しい展開となった。J１第２３節として迎えた首位チーム・ヴィッセル神戸を相手に、前半のうちに退場者を出してしまう。しかも、その際に与えた直接FKをサッカー元日本代表FW大迫勇也に決められ、先制点まで譲ってしまったのだ。
本来、「首位」という場所にいるべきは川崎フロンターレであるとクラブもサポーターも感じていればこそ勝たなければいけない試合だけに、この展開はあまりにも痛いものだった。
それでも川崎は数的不利を感じさせない戦いを見せた。ボールを保持し、走り、突破し、連携で崩す。ゴールに何度も迫り、少なくとも最後の１秒まで観ている人に逆転を信じさせるほどのすごみと迫力を持っていた。
試合は負けたものの、その戦う姿勢は子どもたちの心に刻まれた。星さんに感想を聞くと、第一声は「かっこよかった」。通常、負けた選手に使われるものではないが、最後まで戦う姿が彼にこう表現させた。
他チームであれば、敗戦後にブーイングが出ることも少なくない。しかし、川崎の選手はピッチの上で奮闘すればこそこういう気持ちを観る人に抱かせる。だから、等々力はいつも多くの人で埋まる。
星さんは、試合後に興奮交じりにこうも語った。
「接戦でドキドキして、本当に楽しかったです。負けたけどかっこよくて、諦めなかった姿をこれからの自分にも生かしていきたい」
中学２年生の平野さんも同じだった。「めっちゃ楽しかったです。負けちゃったけど、すごい姿を見れたから嬉しかった。惜しいところもあったし、負けたかもしれないけどあきらめなくてプロってすごいなって」と話し、プロという非日常の世界から刺激を受けていた。
（取材・文／中地拓也）
（後編に続く）
