人口492人の福島県檜枝岐村の小中学生6割が参加した、J1川崎フロンターレを応援するためのバスツアーが組まれた。片道5時間にもかかわらず、試合を応援するためだけに1泊2日の旅程が組まれたのは、この村にある川崎のスポンサーのクラブ愛が村を動かしたからだった。
(前編から続く)
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「この中のほとんどの人がプロスポーツを観たことがないと思います」と参加者の一人が説明してくれたように、初めてのJ1観戦は子どもたちにとって大きな思い出となった。そもそも檜枝岐村の中学校にはサッカー部がない。サッカーをするために、隣町にある少年団に1時間かけて通う子どもがいるという。
それほどサッカーと縁遠い地域だけに、参加者の一人は「プロのスポーツに触れあうだけで感動です」と笑顔を見せた。
村で生まれて育った中学校3年生の星勇伸さんは修学旅行で東京に来たことはあったものの、「特別な機会」と言葉にするほど、今回の等々力競技場への1泊2日のフロンターレ応援ツアーは大きな思い出になった。そもそも、「サッカーが強いチームだなぁくらいしか知らなかった」と話すフロンターレを、この日は「檜枝岐村と関係が深い」と話すほどにまで親近感を抱いていた。そして、「サッカーに興味が湧きました」とも話す。
そんな星さんに好きな選手を聞くと、出てきた名前は川崎のキャプテンである橘田健人。以前に開かれたクラブと村民との交流会でビデオメッセージをくれたこともあり、「かっこいい」と話す中学3年生の背中には、「8」の数字がプリントされていた。「“夢は叶う”って、日本で活躍する選手が僕たちに言ってくれた」と輝かせた目に、プロスポーツクラブが持つ意義を見た気がした。