J1リーグで、ヴィッセル神戸が首位に立ち続けている。原動力のひとりが大迫勇也だ。前節の川崎フロンターレ戦では決勝点もマーク。日本代表からは離れているが、いまだ成長を続けるFWをサッカージャーナリスト・後藤健生が分析する。
■空中戦に持ち込ませない頭脳
相手DFと離れて勝負する……。それは、ヘディングでの競り合いの場面でも見られた光景だった。
後方からのロングボールをヘディングで競り勝って味方に正確に落とす。これも、ポストプレーヤーの重要な役割である。そして、川崎戦でも大迫勇也はヘディングでのポストプレーを何度も見せた。
41分、左サイドの初瀬亮から右奥の大迫にロングボールが送られた。大迫は、すらすようなヘディングでタッチライン沿いにいた武藤嘉紀に預けて、自らはゴール前に動こうとしたが、この場面ではドリブルを仕掛けた武藤がSBの登里享平との競り合いでファウルを取られてしまった。
56分には、やはり初瀬から右奥の大迫にロングボールが送られる。すると、大迫はヘディングで酒井高徳に落とし、酒井は山口蛍とのワンツーを使って抜け出してシュートを放った(DFに当たったボールはGKの鄭成龍がキャッチ)。
これは、いずれもチャンスにつながった、あるいはチャンスになりかけた場面だが、大迫はその他の場面でもマークから離れて確実につないでいた。川崎の鬼木達監督は、試合後に「大迫との空中戦を意識して高さがある山村を起用した」と語ったが、大迫は空中戦を完全に支配していたし、そもそも、うまくDFから離れてプレーすることによって「空中戦」という場面を作らせなかったのだ。
相手のマークからはずれる動きは、シュートシーンだけではないのである。
また、ヘディングによるパスというプレーは、実は日本の選手はあまりうまくないが、そういう意味でも、川崎戦での大迫はポストプレーというものの奥深さを見せてくれた。