■重なる歴史的名手の姿
そんなヘディングでの確実なつなぎを見ていて、僕は遠い昔の釜本邦茂氏のプレーを思い出した。
左右両足の強烈なシュートに加えて、ヘディングでも圧倒的な強さを持っていた釜本氏。
ボールを収めれば、そのまま反転してマークに付いているDFを引きはがして、強引にドリブルで持ち込んでシュートをたたき込んでしまう。そんな印象のCFだったが、実はポストプレーも非常にうまい選手だった。所属のヤンマーディーゼル(現セレッソ大阪)でネルソン吉村(日本名:吉村大志郎)というブラジル出身の信頼できる相棒と出会ったからでもあろう。
そして、晩年になるとロングボールを受けてヘディングで落として味方を使うようなプレーを再三見せていた。
大迫が、余裕を持ってヘディングで落として味方を使っている場面を見て、僕はそんな釜本氏の晩年のプレーを思い出したのだ。
釜本氏はあまり動かずに、味方に指示を送るプレーは時として「交通整理」などと揶揄されたものだが、それも一つのプレーの仕方であるし、あらゆるポジションの選手に運動量が求められる現代との違いでもある。いや、現代のサッカーでも、動くことと同時に,局面によっては“動かないこと”も大事な選択肢なのだが……。
それに対して、大迫は走ることでフリーになる動きを工夫していた。やはり、これは時代の差といったところだろう。