J1リーグで、ヴィッセル神戸が首位に立ち続けている。原動力のひとりが大迫勇也だ。前節の川崎フロンターレ戦では決勝点もマーク。日本代表からは離れているが、いまだ成長を続けるFWをサッカージャーナリスト・後藤健生が分析する。
■ピリッとしないゲーム
8月12日の土曜日、J1リーグ第23節の川崎フロンターレ対ヴィッセル神戸の試合を観戦した。
このカードは、かつては“パス・サッカーの最高峰”という顔合わせだった。
アンドレス・イニエスタを擁し、バルセロナ・スタイルを追求する神戸。そして、一方はまるでそのバルセロナ全盛期のティキタカを彷彿させるような緻密なパスを展開する川崎。
2018年のJリーグ「最優秀ゴール賞」に選ばれた、あの大島僚太の伝説のゴールが生まれたのも、同年10月30日の神戸戦でのことだった。
「パス・サッカー好き」を自認する僕としては、まさに“大好物”と言えるカードだった。
だが、今シーズンの神戸は吉田孝行監督の下、堅守速攻型に転換して横浜F・マリノスと激しい首位争いを演じている。そして、出場機会を失ったイニエスタもチームを、そして日本を離れてUAEに活躍の場を求めた。
一方、川崎は主力選手の相次ぐ離脱の影響もあるが、かつての破壊力を失い、毎試合のようにメンバーが入れ替わって迷走中。かつての輝きを思い出させる素晴らしいパス展開を見せる瞬間もあるが、それがなかなか得点に結びつかない状況が続き、順位を上げられないでいる。
しかも、連日の酷暑による疲労のせいか、両チームともピリッとしない展開が続いていた。フィニッシュ段階でのパスの精度が足りず、パスにキレがないのだ。この日も、公式記録によれば気温が30.4度で湿度が53%。ねっとりと湿気が体中を蝕むかのような天候だった。