■「質問すべきことも大迫だけ」

 そんな試合の中で、ひときわ輝きを見せ、そして、1人で試合の行方を決めてしまったのが神戸のセンターフォワード(CF)を務める大迫勇也だった。

 試合後の記者会見。最初に登壇したのは神戸の吉田監督だったが、「大迫が直接FKを蹴ったこと」と「後半途中で退いた大迫の状態」の2つの質問が出ただけで、吉田監督の公式会見はあっさりと終了してしまった。

戦術は大迫」であるのと同様、「質問すべきことも大迫だけ」。試合は、確かにそんな大迫のワンマンショーだった。

 それは、一進一退で迎えた前半34分の出来事だった。大迫が素晴らしいポストプレーを見せて、左サイドのジェアン・パトリッキを走らせたのだ。独走するジェアン・パトリッキを川崎のDF大南拓磨が後方から追いかけるが、ペナルティーエリアの手前で手を使って押して、ジェアン・パトリッキが倒れる。

 西村雄一主審はすぐにペナルティースポットを指し、大南にはイエローカードが示された。

 しかし、ここでVARが介入する。

 大南のファウルは間違いないが、それがエリアの中だったのか、外だったのかという確認である。

 そして、西村主審はペナルティーキックの判定を取り消して、エリア外での直接FKを示す。そして、大南のイエローは取り消され、レッドカードが提示された。

 大南のプレーは「決定的得点機会の阻止」であり、レッドカードに値する反則だった。ただ、その結果としてペナルティーキックが与えられた場合には、退場ではなく警告となる。だが、判定が直接FKに変更になったので、大南に退場処分が下されたのである。

 川崎にとっては、PKが取り消されたのが得だったのか、損だったのかは微妙なところである。

 ここで大南が退場となれば、残りの60分近くを1人少ない状態で戦わなければならない。もし、PKで失点したとしても、11人で戦えれば十分に追いつくチャンスはあるのだが……。

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