■欧州との隔たり
育成の一貫性のなさとボールテクニックの欠如のほかにアメリカの将来性を危ぶむ理由があるとすれば、大半の選手がNWSL(ナショナル・ウィメンズ・サッカー・リーグ)でプレーしていることではないか。「女王」であるという誇り、国内リーグでスターの地位を築いて満ち足りたアメリカのプロ生活は、強豪国、強豪クラブがひしめき、女子欧州選手権や毎年の女子チャンピオンズリーグなどを通じて切磋琢磨(せっさたくま)する欧州のサッカーとの隔たりができているのではないか。
結果は「ラウンド16敗退」というショッキングなものだったが、アメリカ代表の「実力」が今回のワールドカップでこれまでになく落ちていたわけでないことは、試合内容を見れば明らかだ。ラピノーは今季限りで引退し、アメリカ代表でのモーガンの未来も不透明だが、次代を担う選手たちも数多くいる。アメリカが急速に落ちていくことはないはずだ。
しかし欧州各国の女子サッカーが急速に成長するなか、これまでのような「女王」としての圧倒的な存在であり続けることは難しい。育成システムの根本的改善、代表選手たちが欧州のリーグに積極的に出ていく姿勢など、大きな「変革」が必要だ。