■アメリカの希望

 今回のアメリカ代表が、2015年、2019年と続いた女子ワールドカップ優勝のチームを引きずり、世代交代が遅れたというわけではない。決勝戦でなでしこジャパンにPK戦で敗れた2011年大会当時からの中心選手は、38歳のFWミーガン・ラピノーと34歳のFWアレックス・モーガンだけ。ベトナム戦で2ゴールを挙げたFWソフィア・スミスは昨年のNWSLでMVPを受賞した新進気鋭のスターだが、まだ22歳の若さだ。ベトナム戦とポルトガル戦に出場したFWアリサ・トンプソンは18歳である。

 キャプテンMFリンジー・ホラン(29歳)は、今回のアメリカ代表でも際だった活躍を見せた。スミスと並ぶ2得点を挙げただけでなく、トップ下として攻守両面で大きな存在感を示した。そのホランが、今後のアメリカ代表にとって重要な示唆になるかもしれない。彼女は、今回のアメリカ代表23選手で唯一欧州のクラブ所属選手なのである。

 コロラド州のハイスクールを卒業すると大学に進まずに欧州に渡り(アメリカ人女子選手で初めてのケースだった)、フランスのパリ・サンジェルマンでプレー、2016年にアメリカに戻ってポートランド・ソーンズに所属し、リーグきってのスターとなった後、2022年1月に再びフランスに渡ってオリンピック・リヨンに加入、女子チャンピオンズリーグ優勝に貢献した。

 このワールドカップでも、ベトナム戦とオランダ戦でゴール。175センチの長身を生かしたヘディングの強さも印象的だったが、何よりゲームを読む力をもち、攻撃をリードするプレーは圧巻だった。

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