常に移り変わるサッカー界の流れに、新たな潮流が生まれようとしている。世界の名手を大金で集めるサウジアラビアだ。その存在は、サッカーにどのような影響を及ぼすのか。サッカージャーナリスト・大住良之が目を凝らす。
■サウジの政策転換
3月のこのコラムで書いたが、サウジアラビアは「孤高」を保ってきた政策を近年大きく転換、観光での入国を認めるようになり、イスラムの聖地のひとつであるメディナへの観光まで(制限つきではあるが)解禁された。最近NHKでサウジアラビアのドキュメンタリーがいくつか放送されたが、いずれもこうした政策があってのものだ。
そして70兆円という巨額を投じて計画都市「ネオム」を建設、その近くには人工のスキー場までつくられる。2029年の冬季アジア競技大会の開催、2027年のAFCアジアカップの開催など、国際大会の開催も決まっている。そして当然、その先には、ワールドカップやオリンピックの開催もある。
PIFの積極的な活動は、「ビジョン2030」という、こうした国家プロジェクトの推進役として行われている。チームスポーツのサッカーにあって、ひとりの選手に年俸数百億円というのは常軌を逸しているが、すべてはサウジアラビという国のイメージを高め、女性差別、人権抑圧といったイメージを払拭して21世紀後半には「観光大国」として世界の人びとを引きつけていこうというプロジェクトの一環なのだ。