サッカー女子ワールドカップが開幕し、日本代表はザンビアから5点を奪って好発進した。この初戦白星が持つ意味、この先の道のりにおける重要性を、サッカージャーナリスト・後藤健生がひも解く。
■「被シュートゼロ」の重要性
攻めても攻めても得点に至らず、たった1本のカウンターで敗れてしまう……。これまで、男子、女子の日本代表が何度も味わった負けパターンである。
カタール・ワールドカップ最終予選の初戦、カタールとのホームゲームで森保一監督率いる男子日本代表が味わった悲劇もそうだった。
そのために、ザンビアに対して日本は守備面で非常に集中した試合をした。
スリーバック(右から石川璃音、熊谷紗希、南萌華)の間で、チャレンジ・アンド・カバーの関係を作ったうえで、さらにボランチもプレッシャーをかけたため、バンダはほとんどプレーできなかった。また、前線からのプレッシングで相手のパスコースを限定。中盤でボールを奪うことができたので、バンダへのロングパスも遮断することに成功した。
シャドーの藤野はいつものように攻守にハードワークしたし、トップの田中はいつも以上にプレスバックして守備に貢献する姿を見せた。
そして、前半のなかなか先制ゴールが生まれず、せっかくゴールを決めたと思ってもVARによって取り消されるという、焦りが生じてもおかしくない状況でも、その集中は途切れなかったし、後半に得点を重ねて大量リードの場面でも、やはり集中が切れることはなかった。
結果として、日本はザンビアに1本のシュートも打たせなかったのだ。いくら、戦力差があるといっても、相手のシュートをゼロに抑えた守備陣は称賛されていい。
つまり、日本チームは全体として非常に慎重に、守備に集中して戦ったのだ。
だから、5ゴールを決めた攻撃よりもまず注目すべきは守備面だった。
クロスに対して飛び込む選手が少なかったのも、トップへのボールが入った時にサポートする選手が少なかったのも、すべてそのためだった。