大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第116回「『ウォームアップエリア』の怪」(1)横浜FC「交代要員退場」の遠因になったカタールW杯運営の不手際の画像
ワールドカップ2022年カタール大会の主会場ルサイル・スタジアム。テクニカルエリアを延長して濃い緑で破線が引かれ、選手たちはそこでウォームアップを行った。副審1(黒服)との近さに注目だ (c)Y.Osumi
■【画像】カタールW杯と違い、十分にウォームアップのスペースが取られた南アフリカW杯の会場

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、「どこにも規定がないって本当?」なアレについて。

■レッドカードが出ても11人のまま

 6月24日に行われたJ1リーグ第18節の「京都サンガF.C.×横浜FC」で、前半のアディショナルタイムに横浜FCの三田啓貴がレッドカードを示された。しかし横浜FCは後半を11人のまま戦った。三田はピッチ上でプレーしていた選手ではなく、横浜FCの交代要員だったからである。

 直前のプレーで、メインスタンドから見て右エンドの右コーナー付近にボールが出た。和角敏之副審は攻撃側の京都ボールであることを旗で示したが、実際には京都FW山崎凌吾が最後に触れて出したものだった。しかし京都のスローインとの判定であることを見た山崎はそのまま走っていってボールを投げようとした。その一方で、近くでウォーミングアップしていた横浜FCの選手たちが激しく和角副審に詰め寄って猛烈に抗議する。

 投げる先を見つけられなかった山崎は上がってきたDF白井康介にボールを渡し、白井が自陣方向にボールを投げたところで、池内明彦主審が強く笛を吹いた。その直前に和角副審が右手に持った旗を上げ、プレーを止めるよう池内主審に求めたからだ。

 コーナーのところまで走り寄り、横浜FCの選手たちを遠ざけて和角副審と数十秒間話した池内主審は、やがて三田のところに歩み寄り、レッドカードを示す。横浜FCの選手たちの先頭に立って和角副審に抗議していた三田は、最後の瞬間に右手を広げようとした。もちろん、和角副審を打とうとしたわけではなかったはずだ。だが結果的にその指先が和角副審の肩あたりをとらえてしまった。和角副審が旗を上げたのは、その直後だった。

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