■カタールW杯での特例
カタールで行われた昨年のワールドカップで、私が最も驚いたことのひとつが、「ウォームアップエリア」の設定だった。
カタール大会では8つのスタジアムが使われたが、「ドイツ×日本」、「日本×スペイン」など8試合が行われたハリファ国際スタジアムを除く7スタジアムがこの大会のためにまったく新しく建設されたものだった。本来は陸上競技場であったハリファはピッチの周囲に大きなスペースがあったが、他のスタジアムは当然サッカー専用であり、できるだけ観客席をピッチに近づけようとした結果、ピッチ周囲のスペースはごく限られたものとなった。
そこで、大会を主催する国際サッカー連盟(FIFA)が決めたのは、「ウォームアップエリアをテクニカルエリアの延長にする」という考えだった。
主に監督がピッチ内に指示を出すベンチ前の「テクニカルエリア」は、タッチラインから1メートルのところまで広げられている。カタール大会では、タッチラインに並行なテクニカルエリアの線を延長する形で、濃い緑の塗料を使ってコーナーの横まで破線を引き、そこまでを「ウォームアップエリア」としたのである。