遠野大弥のプレーイメージは明確だった。
「僕は当てて入って、自分で打とうかなと思ったんですけど」
時間は90+4分。引き分けでも厳しい川崎フロンターレにとって、後がない時間帯の遠野のファーストチョイスは自らのシュートだった。点を取るために60分からピッチに立った遠野の気持ちの強さが感じられる発言だった。
川崎は7月15日に敵地で横浜F・マリノスと対戦。首位を相手に真っ向勝負を挑みながら試合は0−0で推移していた。
結果的に車屋紳太郎が体ごと押し込んだこの90+4分の場面。遠野は自らが蹴ったCKのこぼれ球を引き受け、ドリブルで中央に持ち出している。リターンパスをもらう前提で瀬川祐輔にパスを付ける遠野だったが瀬川は大南拓磨へのパスを選択。このとき遠野は「セガちゃんが、前というか、ワントラップしたので。セガちゃんの判断に任せました」と振り返っている。大南へのパスを選んだ瀬川の判断は決勝点に繋がったという意味で正しかったが、遠野の口調はどこかさみしげだった。