■なぜ欧州へと向かうのか

 「帰国パワー」は、J1にとどまらない。4月の監督交代で一挙にJ1昇格争いに顔を出したJ2の清水エスパルスでは、2018年ワールドカップのヒーローMF乾貴士(35歳、2011年から2021年までドイツとスペインで活躍)がゲームを読む目と巧みなパスでチームを牽引し、FW北川航也(26歳、2019年から2022年までオーストリアで活躍)がパワフルなプレーで奮闘している。2022年ワールドカップの日本代表の守護神だったGK権田修一(34歳、2016年にオーストリアで、2019年から2020年にかけてポルトガルで活躍)の存在も大きい。

 数えてみれば、欧州のサッカーを経験してJリーグに戻った選手は、J1だけでも40人近くにのぼる。その多くが、現在の所属クラブで中心選手として活躍し、Jリーグのサッカーのレベルアップに大きく貢献している。

 現在、欧州の各国リーグで活躍している日本人選手は100人近くになるだろう。「5大リーグ」と呼ばれるイングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスのトップリーグ所属選手だけでも15人にもなる。さらには、スコットランド、ベルギー、ポルトガル、オランダなど、そのすぐ下といわれるレベルのリーグにも、たくさんの選手がいる。

 なぜ欧州のクラブに行くのか、それは選手それぞれで違うはずだ。「日本代表への道、ワールドカップへの道」と考えて移籍を決断した選手もいるかもしれない。ともかくできるだけ高いレベルで挑戦したいと自らを励ました選手も多いだろう。その一方で、日本とはまったく違った文化のなかで生活し、サッカーをしたいという考えの選手もいるかもしれない。

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