■失われた牛肉

 ノルウェーで「エビ」ならルーマニアでは「ウシ」だ。2006年、ルーマニア東部の1部リーグクラブUTAアラドが、4部リーグのCSレアル・オリアにベテランDFマリウス・チオアラの売却をもちかけた。「移籍金」は牛肉15キロだったため、レアル・オリアは即座にその申し出を受けた。しかし数日後、レアル・オリアの幹部は頭をかかえることになる。チオアラは引退を決意し、スペインで農業あるいは建設の労働者として働くことにしたというのである。

 「私たちは、いちどに2つの大切なものを失った。ひとつは優秀な選手であり、もうひとつは選手たちに食わせるはずだった1週間分の牛肉だ」

 ジャージと練習着のセットで後にイングランド代表となるタレントを手に入れるクラブもあれば、選手たちが腹を空かせただけで元も子もなくすクラブもある。1ゴール8億5000万円が高いか安いかも、そうした「移籍の悲喜劇」のひとつなのだろう。

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