大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第114回「1ゴール8億5000万円は高いか安いか」(3)選手の対価にあてられた「照明塔」と「エビ」、そして「牛肉」の画像
ストイコビッチ氏の移籍には照明塔が対価として贈られた 撮影:原悦生(SONY α9Ⅱ使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは夏がくれば盛んになる「あれ」。

■イングランドでの移籍「服」

 さて、百億円を超す移籍金が珍しくない今日のサッカー状況のなか、かつては「とんでもない」移籍金があったことは忘れ去られようとしている。

 1980年代から1990年代にかけてイングランド代表で活躍したジョン・バーンズというストライカーがいた。リオのマラカナン・スタジアムでブラジル代表を相手にごぼう抜きの独走ゴールを決め、「ブラジル人よりうまい」と言われたテクニシャンで、スピードあふれるドリブルを売り物にしていた。ジャマイカ生まれで、父の仕事のためロンドンで育ったバーンズだったが、17歳までは小さなアマチュアクラブでプレーしていた。

 そのテクニックに目をつけたのが、歌手のエルトン・ジョンがオーナーを務め、1部リーグ昇格を果たしたばかりのワトフォードだった。1981年、バーンズが17歳のときだった。バーンズがプレーしていた「サドベリー・コート」というクラブに対するバーンズの「移籍金」は、1チーム分のジャージ上下と、練習着のセットだったという。後にバーンズはリバプールに移籍して314試合で84ゴール、イングランド代表でも79試合11得点という選手になる。

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