サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは夏がくれば盛んになる「あれ」。
■イングランドでの移籍「服」
さて、百億円を超す移籍金が珍しくない今日のサッカー状況のなか、かつては「とんでもない」移籍金があったことは忘れ去られようとしている。
1980年代から1990年代にかけてイングランド代表で活躍したジョン・バーンズというストライカーがいた。リオのマラカナン・スタジアムでブラジル代表を相手にごぼう抜きの独走ゴールを決め、「ブラジル人よりうまい」と言われたテクニシャンで、スピードあふれるドリブルを売り物にしていた。ジャマイカ生まれで、父の仕事のためロンドンで育ったバーンズだったが、17歳までは小さなアマチュアクラブでプレーしていた。
そのテクニックに目をつけたのが、歌手のエルトン・ジョンがオーナーを務め、1部リーグ昇格を果たしたばかりのワトフォードだった。1981年、バーンズが17歳のときだった。バーンズがプレーしていた「サドベリー・コート」というクラブに対するバーンズの「移籍金」は、1チーム分のジャージ上下と、練習着のセットだったという。後にバーンズはリバプールに移籍して314試合で84ゴール、イングランド代表でも79試合11得点という選手になる。