最初にボールを浮かせたものを含み、約4.5秒の間に、ストイコビッチは走りながら右足で5回、左足で1回、計6回ボールにタッチした。悪コンディションのなか、ボールを浮かせながら通常のドリブルと変わらないスピードでの前進は、まさに「ワールドクラス」のテクニックだった。

■誰もが通った道

 「ボールリフティング」は、日本のサッカー少年・少女なら誰でも最初にやったに違いない練習である。1人1個のボールをもち、それを落とさないように足で突き上げるのである。3回ほどしかできないものが10回を超えると、一挙におもしろくなる。そして20回、50回とできるようになるころには、さらに回数を伸ばすために進んで「努力」をするようになる。

 多くのコーチたちは、この「努力」の姿勢こそ、技術向上の大きなカギだと言う。ボールリフティングは集中力を養い、同時に、ボールの中心をとらえる感覚を身につけさせ、そしてさまざまな状況にときに片足だけで対応しなければならないサッカーの「ボディコントロール」の養成、必要な体の動かし方を身につけさせる。ただし、ボールリフティングがうまくなる、イコール、サッカーがうまくなることでもないところが微妙だ。

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