大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第113回「何でも、何回でも、突き続ける」(1)男子上級生を抑えて「ペレ杯」を獲得した小学生時代の日本女子代表選手の画像
モロッコでのワンシーン。世界中の子どもたちが、ボールリフティングを楽しんでいる (c)Y.Osumi
 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、サッカーに役立つのか、役立たないのか、分からないもの。

■ストイコビッチの妙技

 ことしスタートから30年を迎えたJリーグが、過去30年間の「ベスト・アウォーズ」を企画、そのひとつ、「ベストシーン賞」に選ばれたのが、名古屋グランパスのドラガン・ストイコビッチの「雨中のリフティングドリブル」だった。

 1994年第2ステージの第11節、9月17日に岐阜の長良川競技場で行われたジェフユナイテッド市原(現千葉)との試合。岐阜市は前日から大雨に見舞われ、2日間の降水量は168ミリにも達した。試合中にも雨はやまず、ピッチには水が浮き、あちこちに水たまりができる悪コンディションである。

 市原の左CKを名古屋のセルビア人FWドラギシャ・ビニッチが打点の高いヘディングでクリア。ストイコビッチはそれをペナルティアークのすぐ外で受けたが、ボールが水たまりに落ちたのを見てすかさず右足ですくい上げ、そのままリフティングしながら全速力でハーフラインあたり(ラインはすでに見えなかった)まで前進、左足で前線を疾走するFW森山泰行の前のスペースに見事なパスを送った。ただ市原のDF中西永輔が懸命に戻って水しぶきを上げながらスライディングタックル、シュートには至らなかった。

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