■「それをさせないために前からいく」

 神戸は大迫勇也武藤嘉紀という強力な選手が前線にいて、しかも今、好調の状態にある。だからこそ、「相手に抑えられるシーンも出てくると思うので、それをさせないために前からいくとか、それをされたときのことを考えるんじゃなくて、されないようにっていうのがカギだと思う」とイメージを膨らませる。

 そして「そのためには、まず、相手にボールを渡さないように自分たちが攻撃するとか、やり切る」ことの重要性を説く。そして、「途半端なプレーは相手に隙を与える要因になると思うので、そこは、気をつけながら、かつ大胆にやりたい」とも話す。

 そんなタレント集団にあって、やはりトップにいるのは元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ。すでに退団が決まっており、川崎としてはJのピッチで戦う最後の機会となる。脇坂は、「単純に僕が一番好きなサッカー選手で、小さい時に憧れていたサッカー選手」と話し、「大学生のときはプレー集をずっと見てた」とも明かす。

 昨年のホーム最終戦ではユニフォーム交換をしたほどその技術に憧れていたが、「そういう大好きな選手なので、負けたくない」と勝気を見せたものの、「個人としてはではなくて、チームとして勝ちたい」とあくまでもチームの勝利を優先する。

 2019年の試合では、ボールを奪いにいった際、「映像で観ていたようなかわされ方をして、“あ、これ見てたやつだ”」と感じたこともあった。「自分も体が強かったりとかスピードがある選手じゃない」からこそ、その苦い思い出も、自身の力に変えるための時間を過ごしてきた。その時の状況を「多分、(イニエスタは)待ってたぐらいの感じだったと思います。で、(奪いに)行かなかったらすごいパスを出されてた。その状況に置かれてる段階で、僕は後手を踏んでいるので、ポジショニングだったりとか、その前で負けている」と分析したうえで、ピッチに生かしている。

「9位にいるチームではないと思うので、上だけを目指してやって行ければ」と力強く言葉を発する脇坂が、ノエビアスタジアムでチームを勝利に導く。

(取材・文/中地拓也)

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