大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第112回「カップかトロフィーか」(3)戦禍を免れた初代ワールドカップの画像
1930年の第1回大会から1970年大会まで9大会で使用された「ジュール・リメ・カップ」。幾多の試練を乗り越えたカップも、1983年に盗難に遭い、溶かされてしまった (c)Y.Osumi

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回はキャプテンがこれを両手で持ち、チーム全員で「ウ~~~、ワッ!」という瞬間が至福。

■「勝利」と呼ばれた優勝杯

 さて、ワールドカップも「初代」には「杯」の部分が付いていた。フランス人彫刻家のアベル・ラフルールのデザインによるもので、2体の女神が両手を挙げて八角形の「カップ」を支えている形。女神はルーブル美術館所蔵の「サモトラケのニケ(勝利の女神)」からヒントを得たものだったという。銀地に金メッキしたもので、高さはラピスラズリ製の台座を含めて35センチ、重さは3.8キロだった。

 カップは大会前に無事完成し、1930年6月20日にFIFAのジュール・リメ会長とともにパリを列車で出発、大会に参加する欧州の4チーム(フランス、ルーマニア、ベルギー、ユーゴスラビアの代表チームと同じ船で南フランスの港から南米に向かった。そして7月30日の決勝戦後、優勝したウルグアイの協会会長ラウル・フデ会長に、リメFIFA会長から手渡された。

 この「初代ワールドカップ」は、当初は「ビクトリー(勝利)」と呼ぶことにしていたようだが、やがて単に「ワールドカップ」と呼ばれるようになる。そして「ワールドカップの父」と呼ばれるリメ会長(在任1921~1954年)の大会への偉大な貢献を称え、1946年、正式に「ジュール・リメ・カップ」と呼ばれることになった。

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