後藤健生の「蹴球放浪記」第162回「ジュゼッペ・メアッツァで『にらみ返し』」の巻(2)ローマで発動した「恫喝」作戦の画像
「チケットお願~い」作戦で手に入れたサンロレンソの記者入場券 提供/後藤健生

 サッカーの世界では、日本人が持つ真面目さを「狡猾さ」が上回ることがある。サッカージャーナリストにとっても、これは重要な要素だ。蹴球放浪家・後藤健生は日本の伝統文化を活かしつつ、マリーシアを発揮して世界を渡り歩いてきた。

■エキサイティングなゲーム

 指定券を持った人が来なかったのか、それとも「にらみ返し」作戦であちらがスゴスゴと引き返して行ったのかは定かではありませんが、もともとイタリアでは指定席という概念もいい加減なもので、1980年頃まで人々は自分の指定の席とは違った席に勝手に座っているものでした。だから、指定券を持っている人がやって来ても、僕が偉そうな顔をして座っているのを見て諦めた可能性はかなり高いように思います。

 さて、試合は30分にアンドリー・シェフチェンコのクロスをフィリッポ・インザーギが決めてミランが先制しましたが、63分にヤリ・リトマネンが同点ゴールを決めます。

 ファーストレグはスコアレスドローでした。で、当時は「アウェーゴール」が適用されていましたから、1対1となった瞬間にアヤックスが逆転したことになります(同点という状態は存在しないのです)。しかし、直後にシェフチェンコが決めて再びミランがリード。さらに、78分にはスティーブン・ピナールのゴールでアヤックスが再々逆転。そして、アディショナルタイムにヨン・ダール・トマソンのゴールでミランが再々々逆転……。

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