■ネクタイはスーパーで買う

 現地ではクラブが百パーセント取材の協力をしてくれる約束になっている。と言っても、クラブの歴史やチームの内情を知る同業者からの情報もほしい。――そう思っていたところに、おあつらえ向きの人物が東京に現れた。8月中旬、ポルトアレグレのラジオ局「ラジオ・グアイーバ」のジョン・カルロス・ベルモンチというレポーターがひょっこりやってきたのだ。

 私たち広報担当は彼を歓待し、彼が必要とするトヨタカップについての情報や写真素材などを惜しげなく提供した。そして「9月に取材に行くから協力してほしい」と頼んだのである。

 この作戦は、うまく功を奏した。ベルモンチ氏は、私がポルトアレグレに到着した日に空港に迎えにきてくれた。驚いたことにテレビのカメラクルーまで連れてきている。「ラジオ・グアイーバ」は、その傘下に「テレビ・グアイーバ」ももっており、彼はその仕事も兼務していたのだ。そして私は、空港でしっかり30分間のインタビューを受けることになる。

 「ジョン、クラブに行く前にひとつ買物をしたい」

 ホテルに荷物を下ろし、シャワーを浴びてヒゲをそり、ベルモンチ氏と遅めの昼食をとり、彼が自分の車でクラブまで連れていってくれることになった。その車中で、私は彼にこう切り出した。

 「何を買うんだ?」

 「ネクタイ。日本からもってくるのを忘れてしまったんだ」

 彼はスーパーマーケットの前で車を停め、「ここで買ってこい」と言った。さすがジャーナリスト。会長などクラブの主要にあいさつするのにネクタイは必要でも、他の場面では無用の長物。そんなものを高級紳士服店などで買う必要はないことは百も承知だった。おかげで出費は数百円(!)で済んだ。

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