■「次はJリーグタイトルがほしい」
「レッズに戻ってもらうオファーを出した時、慎三と1つ約束したことがあります。それは『サッカー人生を閉める場所』として戻ってきてほしくないと。とにかく『最後にやり切る場所』として戻ってきてほしいと伝えて、本人も合意してくれた。それを準備のところからピッチ内外で表現してくれています。今シーズンの慎三の存在感は計り知れないほど大きいし、いい影響を与えてくれている。ACL制覇という結果にも大きな力を与えてくれたと思っています」
土田尚史SDも10日のオンライン会見で労いの言葉を贈っていたが、間もなく37歳になろうとしている今、興梠はようやく全力を出し切る素晴らしさや充実感を再認識したのではないか。
30代後半になって輝きを増した同期の家長昭博(川崎)もそうだが、天才は才能があるからこそ、往々にして努力の重要性に気づくのが遅れがちだ。彼らはここ数年で自分のやるべきことに気づき、前向きに取り組んだからこそ、今の活躍がある。それは日本サッカー界にとっても大きな意味を持つ。
「次はJリーグタイトルがほしい。レッズは今、一番そこに飢えてるんじゃないかと思います」と本人は静かに語っていた。であれば、もっともっと貪欲に泥臭く突き進んでもらいたい。限界を超えていく興梠慎三の姿をもっともっと見続けたいものである。
(取材・文/元川悦子)