JリーグはSNSで、J2第10節のワンシーンを公開した。激しい戦いの中のスポーツマンシップあふれる一瞬が、多くの人に癒やしを与えている。
徳島ヴォルティスとV・ファーレン長崎は16日、鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアムで対戦した。長崎はプレーオフ進出圏内の5位につけ、自動昇格ラインの2位までも勝点6差。一方の徳島は未勝利で最下位と、立場は違うものの互いに勝点3を渇望する一戦だった。
両チームの選手ともに、プレーに力がこもる。すると前半半ばに、勝敗の分かれ目になりかねないプレーが生まれた。
追いすがる長崎の選手を振り切ってドリブルで突進したのは、徳島FW柿谷曜一朗だ。12シーズンぶりに徳島に戻ってきたが、ここまでのゴールは1得点のみ。ジーニアス(天才)と呼ばれる高い技術だけではなく、そのクラブへの思いでファンからも大きな愛情と期待を受ける柿谷としては、もっと結果を残したい心境であるはずだった。
ペナルティーアークに差しかかったところで、徳島の背番号8が切り返す。柿谷の突破は、ファウルで止められてしまった。
止める方も必死だ。足を引っかける格好になってしまった長崎DFヴァウドは、昨シーズンまでJ1で戦っていた。2020年に清水エスパルスに加入して主力として戦っていたが、昨季はリーグ戦8試合の出場にとどまり、クラブをJ1に残留させることができなかった。いわば、自身にとってはリベンジとなるJ2挑戦なのだ。
互いの懸命な思いがぶつかり合った場面。互いに目くじらを立ててもおかしくなかったが、そうはならなかった。
ヴァウドは笛を吹いた主審に対して、両手を合わせて「ファウルじゃない」とアピール。天を仰ぎながらも、顔には笑みを浮かべていた。
倒された柿谷も、ヴァウドをフォローする。ジェスチャーで語りかけながら、ヴァウドを軽くハグ。柿谷も穏やかに笑っていた。