■菅平高原の美しいピッチ

 私が監督をしている女子チームが、毎年楽しみにしていた大会がある。『サッカー・マガジン』が主催する全国女子大会。毎年5月のゴールデンウィークに、長野県の菅平高原で行われていた。コロナ禍で3年間休止となったが、ことしまた開催される予定で、私のチームもまた久々に参加の申し込みをした。

 何が楽しみなのか。25分ハーフとはいえ、3日間で少なくとも6試合できるからだけではない。すべての試合が、美しい天然芝のピッチで行われるからだ。標高1200メートルを超す菅平高原は、通常、4月下旬まで雪で覆われている。そしてこの大会に合わせるかのように、雪の下から緑美しい芝生のグラウンドが現れるのである。当然、ゴールデンウィークに行われる女子大会は、「冬眠から起きたて」の最高のコンディションの芝で試合を楽しむことができる。

 かつて菅平高原は、夏のラグビー合宿のメッカであり、冬にはスキー場としてにぎわっていた。しかしその間は訪れる人も少なく、旅館組合は他の時期に人を集められる事業を模索していた。その相談に乗ったのが、『サッカー・マガジン』の編集長・千野圭一さん(故人)だった。「9月に大学の同好会の大会をやったらどうか」との提案が即座に取り上げられた。1982年のことである。そして当時から女子サッカーに厚い理解を示していた千野さんは、この大会に女子チームをいくつか招待し、女子の大会も併設させた。

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