国際サッカー連盟(FIFA)は、その名の通り国際大会を運営する組織である。今では代表チームだけではなくクラブ世界一を決める大会FIFAクラブ・ワールドカップ(FCWC)までも運営している。だが、代表チームも含めたワールドカップは無謀な肥大化を続ける。この現状に、サッカージャーナリスト・大住良之が警鐘を鳴らす。
■あきらめの悪い会長
こうした経緯のなかで、FIFAのインファンティーノ会長は「24チームのFCWCをあきらめたわけではない」と語っていた。そして中国サッカー協会は、「その第1回大会の開催権はまだ中国が握っている」という考えを表明している。一方で、2025年の新大会はアメリカで開催される可能性が強いという見方もある。2026年ワールドカップはアメリカ、カナダ、メキシコの3か国共同開催だが、中心はアメリカ。その「プレ大会」として新形式のFCWCを開催するだろうという。
さて、今回正式決定された「FCWC2025」の参加チームは32。その内訳は以下のとおり。
欧州(UEFA) 12クラブ
南米(CONMEBOL) 6クラブ
アジア(AFC) 4クラブ
アフリカ(CAF) 4クラブ
北中米カリブ海(CONCACAF)4クラブ
オセアニア(OFC) 1クラブ
開催国 1クラブ
24クラブから32クラブへの増加分(8)は、その半分が欧州に割り当てられているなか、南米には増加がなかった。
2017年、24クラブによる2021年大会の開催が発表されたとき、ビッグクラブを含む200を超す欧州のプロクラブが加盟する「欧州クラブ協会(ECA)」は強く反対の意思を示し、「ECA加盟クラブはこの大会に参加しない」とまで発表している。2025年に始まる新形式の大会で欧州のクラブ数を8から12に増やした背景には、より多くの欧州クラブに恩恵(賞金などによる経済的な利益)を与えることで、ECA内の意思統一をさまたげようというFIFA側の意図が見える。
現代の世界のサッカーの大きな問題が過密日程にあるのは、ずいぶん前から明らかだった。欧州のトップクラブの選手たちは、年間50試合を超える国内大会(リーグ戦、カップ戦)に加え、欧州のカップ戦などを戦い、その上に通常でも年間10試合になる「代表戦」をこなさなければならない。さらに、本来ならまとまった休暇をとれるはずの6月から7月にかけて、2年ごとに代表チームの国際大会(ワールドカップだけでなく、欧州選手権などの地域選手権、さらにはオリンピックなど)もある。
この過密日程のなかで選手たちの健康を守るのは非常に難しい。従来のようにFCWCが7クラブだけの大会で、欧州のクラブが準決勝からわずか2試合だけすればいいという日程ならまだ影響は少ないが、1か月間近く続く大会になるとまったく話は違う。この大会が始まれば、トップクラブの選手たちは4年に1度しかまとまったシーズンオフを取れないことになる。4年のうち、1年はワールドカップで、1年は欧州選手権など地域選手権で、そして1年はこのFCWCで使われてしまうからだ。